静穏総長も、時には激しく愛したい
一つではなく、立て続けに質問した俺に、立花は「それは」と、僅かに目を伏せた。
しかし、それも一瞬のこと。
再び視線が交差した立花の目は、凛としていて、そして……照明に負けないくらい輝いていた。
「私……生吹くんを追いかけようとして、高いフェンスをよじ登ろうとしたんです」
「⁉」
「あ、それ聞いたことあります!」
日向の言葉に「そうだったの?」と、顔を赤らめる立花。その様子を見ただけだと、とてもフェンスをよじ登る逞しさがあるとは思えない。
「フェンスに登ろうとしてたなんて、変な話ですよね。
だけど誰かのために行動し逞しくなる私を見て、大切な人が”そんな私も大歓迎”って言ってくれたんです」
「大切な人?」
「お母さんです。と言っても私は孤児院で育ったので、そこの施設長の事ですが」
立花の目が、さっきよりももっと優しくなる。その姿に、早くも日向は涙していた。