静穏総長も、時には激しく愛したい

という手紙を、澄に持たせて一時間。

私は、今……



「本日は大変お日柄もよく、ご両家様におかれましては誠におめでとうございます。

ただいまより、若桜澪音様と純白純弥様との婚約の儀を、とりおこなわせていただきます」

「(なんでぇ⁉)」



老舗の高級料亭にて……始まりを告げた婚約式に、顔を青くしていた。



「ちょっと、何がどうなってるの⁉」

「知りませんよ、こっちが聞きたいです!」



隣同士の純弥さんと私。

バレないように内緒話をする様は、はたからみると可愛い婚約者同士に見えるだろうけど……。

お互いの顔には冷や汗というか脂汗というか、確実に良くない物が浮かんでいた。



「澪音ちゃんの愛しの王子様は、どこに行ったの!」

「現在捜索中です!」

「まさか”逃げた”の⁉」

「形式上おめでたい日に、縁起でもないことを言わないでください!」

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