静穏総長も、時には激しく愛したい

「俺、思うんだけどさ。千秋くんって、きっと澪音ちゃんの存在を忘れてるんだよ」

「淡々と言うのやめてください、かなり傷つきます!」



「めでたい」と連呼する大人たちに混じって、顔面蒼白の私。

滞りなく式が進むにつれ、豪華な食事はおろか、飲み物の一滴さえも喉を通らなくなっていった。

だけど……



「澪音ちゃん、ハイこれ」

「え?」

「可愛いお花の形をした練り切りだよ。コレ食べて元気だしなって」

「……!」



小皿に乗ったピンクの和菓子。中に入ってるのは、白あんかな? 色合いや、丸いフォルムが可愛い。

でも今は食べる気分じゃない――そう思った時、「懐かしいね」と純弥さんが言った。



「澪音ちゃんに初めて会った日。その時は、ハートの飴をあげたっけ」

「あ……そう言えば、そうでしたね」



懐かしい。少し前の事なのに、色々ありすぎて随分と前の事に思える。
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