静穏総長も、時には激しく愛したい

――いきなりナンパするんじゃないよ、全く

――ナンパじゃないよ。その子が、なんだか悲しそうな顔してたからね


初対面だったにもかかわらず、純弥さんは私に優しくしてくれた。あの時から、今までずっと。



「……美味しい」

「それは良かった」



和菓子を、少しだけ口に入れる。

上品な甘さが、ふわりと私の心を撫でる。まるで「大丈夫だよ」って言ってくれてるみたい。



「あの日と同じですね」

「結局、飴は食べたの?」

「澄に没収されちゃいました」



すると純弥さんは「さすが執事くん」と苦笑を浮かべた。

だけど……

ふと笑って、和菓子を食べる私の頭を撫でる。



「俺が渡すものってね、ご利益があるんだ。飴の時だって、なんとかなったでしょ? だから今回だって、きっと大丈夫だよ」

「純弥さん……」



もう本当に、この人は……。

こんな時でさえ、私を気遣って励ましてくれるんだ。やっぱり純弥さんって、優し過ぎるくらいに優しい人。
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