静穏総長も、時には激しく愛したい


「(お父さんお母さんに勘づかれないように、上手くやるぞ!)」



互いの親は安全な場所へ逃げたと言っても今日の主役たちが気になるのか、襖の影から私たちの様子を見ている。

そんな大人たちを承知の上で、純弥さんは”わざとらしく”私を守った。



「俺が守るからね、澪音ちゃん!」
「キャー。純弥さん、カッコいい―」

「……はぁ」
「な、なんですか」



私を見てため息をついた純弥さんは「大根」とポツリと言った。

とっさに小鉢に入った大根を見たけど……

もしかして「大根役者」って言ってる⁉
私の演技、そんなに下手でしたか⁉



「澄に演技指導もしてもらえば良かった……」

「っぷ、くすくす」



しょぼくれる私に堪え切れず、純弥さんが笑った――その時だった。
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