静穏総長も、時には激しく愛したい
連れて行かれる純弥さんの顔を見て「ふうん」と。濃い紅色をひいた唇を、スッと上げた。
「えらく素直に”婚約する”って言ったかと思えば。やっぱり、まだ時期じゃなかったのね。純弥」
さすが純弥さんのお母さん。
動じないばかりか、純弥さんの演技に気づいている。自分の息子がココではない、別の場所を望んでいることも――
「純弥さん……あなたのお母さんって、とってもいい人だね」
それに比べて私の両親は――と。
心に暗い影が落ちかけた時だった。
グイッ
混乱に乗じて、私の腕を引っ張る、新たな手。
冷たい体温。
それは――
「お待たせ、澪音」
「か、奏さん……っ!」
恵まれたお天気により、その瞳に陽光が当たる。交わる綺麗な灰色の瞳。その中には、今にも泣きそうな私が写っている。
だけど……