静穏総長も、時には激しく愛したい
もちろん、これは澄の演技だ。だって奏さんと逃げてる今、澄と目が合ってるんだもん。
まるで「いってらっしゃい」と言ってるような、優しい瞳の澄。
そんな彼を見て、ついさっきの事を思い出す。
――婚約式が始まる前。
控室にて。
今日のためにキレイになった私を見て、澄は「お嬢様じゃなくてお姫様になりましたね」と言った。
『澄、その事なんだけどね』
結婚した後に幸せになれるようにと、「ゲン担ぎ」で私の美容に力を入れていた澄。
だけど「きっと奏さんが婚約式を中断すると思う」と私が言うと、苦笑を浮かべた。