静穏総長も、時には激しく愛したい
『ゲン担ぎの必要はなかった、ですか。でも、美容にかけたお金が無駄になって良かったです』
『良くはないよね? だって何十万も使ったし』
だけど、澄は私の唇に人差し指を置き……ふるりと、首を横に振った。
『いくらお金を積んで綺麗になったところで、お嬢様の”本当の笑顔”に勝る美しさは、この世にありませんから』
『!』
『千秋さんと一緒になることでお嬢様が笑ってくださるのであれば、それこそ私の本望。お金なんて惜しくもなんともありません』
『……そう、なんだ』
笑って視線を下げた私を見て、澄は「お嬢様?」と。膝まづいて、私の顔を心配そうに覗きこんだ。
『ねぇ……、澄』
私は昔から、両親から欲しい言葉をもらえなかった。だけど、それでも耐えてこられたのは……澄がいてくれたから。
あなたが両親の代わりに、私を大切に見守ってくれたから、ここまで歩いて来れたの。