静穏総長も、時には激しく愛したい

『もしも私が結婚する時は、お父さんじゃなくて……澄とバージンロードを歩きたいな』

『!』



すると、澄は顔を歪めた。
不服そうに、不満そうに。



『お嬢様は本当、酷なことをおっしゃる』

『え?』

『いえ。喜んでお受けいたします。

ただ――

この前みたいに千秋さんに泣かされるばかりなら……バージンロードを歩く側ではなく、バージンロードの先であなたを迎える側になりますので、そのおつもりで』

『……ん?』



ごめん難しかった――と。理解できなかった私を見て、澄は笑った。

「それでこそお嬢様ですよ」と。



『なんか、バカにされてる気がするのは私だけ?』

『なにをなにを。小さな頃より、いつ何時もお慕いしておりますよ、お嬢様』

『はいはい〜』



そんな会話を思い出した時――



庭から外へ逃げる私に向かって、澄はほほ笑んだ。自身の懐から、奏さんに渡すはずだった手紙を出しながら。
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