静穏総長も、時には激しく愛したい

「え……え、ぇえ?」



慌てる私に、ゆっくり降りてくる整った顔。

恥ずかしくて「わぁあ!」と叫びそうになった時、ピタリと。奏さんは、私の顔の目の前で止まった。



「(ち、かい……近いっ)」



もう、いつ唇が当たってもおかしくない。むしろ、この状況でキスをしないのが不思議なくらい――

だというのに、そんな恥ずかしい状況で奏さんが口にするのは……お砂糖よりも甘い言葉。



「皆の前で、”澪音が好き”って言った俺の言葉」


――何よりも澪音が好きで、大事だ


「もしかして忘れたの?」

「ちゃ、ちゃんと聞いたのですが、いまいち自信がなくて……」

「……ふぅん」



すると奏さんは「頑張ったのにな」と、私から視線をそらす。

まるで「悲しい」って言ってるみたいで……思わず頭を撫でてしまった。



「でも……告白された自信がなくなったの、奏さんのせいですからね? あの日から私をほったらかしにして……」
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