静穏総長も、時には激しく愛したい
「あー、つまんね。もう終わりにすんね?」
「……――」
諦めて目を閉じようとした、
その時だった。
ヒュッと俺の目の前を何かが通り過ぎ、捕まっていた拘束がいつの間にか解けた。
ひさしぶりに深呼吸が出来、空気が通った喉が刺激され、むせてしまう。
「ごホッ、がっ……」
俺の見た目、相当ボロボロだろうな。カッコ悪い……。
恥ずかしさで目を瞑った、その時だった。
「――おい」
俺の上から、静かに声が降って来たんだ。
「立て。例え死にたくても、何の抵抗もしないで死ぬのはナシだ。不良やってるなら、相手と刺し違えてでも拳をふるう――
そんな度胸を最後まで持て。俺が見届けてやる」
「……あっ」
逆光だから、あまりよく見えなかった。
だけど、不良のたまり場に、穏やかに響いた声に……なんだか安心してしまったんだ。