静穏総長も、時には激しく愛したい

「総長、どうします?」

「ここで女を助けないほど、【青翠】は腐っちゃないだろ?」

「もう。素直に”助けてこい”って言ってくださいよ!」



文句を言いながら、睦は白い女へ近づいた。そして肩を抱き上げ、なんとか立ち上がらせている。

……睦は、けっこう背が高い。が、驚くことに、睦よりも女の方が高かった。

それに、この女。
どこか違和感があるような――



「ねぇ、君たちさ」

「!」



すると女が、いきなり口を開く。

美人な顔のわりに低い声を出すものだから、睦は驚いたようだった。



「……なに?」

「私を、病院に連れて行ってくれない? さすがに、ちょっとヤバいかも」

「……分かった」



弱った笑みを浮かべながら、やっとの事で立ち上がる女。その女の顔には、いくつにも殴られた痕があった。

それに、頭から血が出ている。流れた血は目の中に入りそうで、女はしきりに瞬きして避けていた。
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