静穏総長も、時には激しく愛したい
「とりあえず血を止めよう。病院はそれから、」
「!」
パシッ
すると、女は手を伸ばした俺の手を取った。そして力なく、首を横へ振る。
「ダメ。先に、病院へ行って」
「でも、」
「いいから――追われているの、私」
「!」
なるほど。命からがら、ここまで逃げて来たってわけか。そして、いつ追手が来るか分からない、と。
――全てを理解した俺たち。
睦は「美人は大変っすね。元カレからの怨恨?」なんて聞いている。
「じゃあ美人さん、俺の背中に乗ってください。かっ飛ばしますよー?」
「……バイクが良かった」
「今、家にあるんですって……」
残念がった女は、当たり前のように「バイク」と言った。まるで、俺たちが暴走族だと知っているみたいに。
だから聞いた。