静穏総長も、時には激しく愛したい

パクッ


「ん、美味しい」と言ったのは、ふくちゃん。

反対に、私は――



「ふくちゃん。このクレープ……色んな味が混ざりすぎて、よく分からないんだけど……」



目の前に、こんな豪華なクレープがあるのに。なぜか美味しいと思えない。


イチゴも、カスタードも、チーズケーキも、そして生地そのものも――色んな物が複雑に絡み合っている。

そして、この複雑さは、まるで“私”そのものだ。

だって……――



ブブッ



「澪音、なんか鳴ってない?」

「あ、私のスマホだ! ごめん、電話してくるね」

「ここでもいいのにー」



スマホの画面を見て、ふくちゃんの傍を離れる私。

「ここでもいい」と言ってくれたふくちゃんに笑い返した後、路地裏へ向かう。


そして――


ピッ



「なんですか、お父さん」
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