静穏総長も、時には激しく愛したい
「!」
見えない場所から声がした。
そして、その声に……聞き覚えがある。
「ま、さか……奏さん?」
ポツリと呟いた、その時だった。
建物の影から、スッと人影が見える。
その人は背が高くて、髪が黒色で、陽光が当たった瞳は灰色に見えて……
「やっぱり、キレイ……」
「え、澪音?」
「……っ」
奏さんだ。
一緒に帰った日から、全く会えてなかった奏さんだ……っ。
「お久しぶり、です……」
「……」
路地裏でクレープを片手に持った私と、寒いのか、今日もカーディガンを着ている奏さん。
なんとか挨拶をしたけど、奏さんは、気まずそうに目を逸らすだけ。
……やっぱり、私がいちゃダメなんだね。そりゃそうか、彼女が出来たんだもんね。