静穏総長も、時には激しく愛したい
一緒に教室にいたけど、
名前で呼んでくれたけど、
一緒に帰る約束をしたけど、
私ではない誰かと、奏さんは付き合ってるんだよね。
「お、おし……」
お幸せにって言ったら、嫌味に聞こえるかな?
でも、彼女が出来て奏さんも嬉しいだろうし……おめでとうって、言ってあげたいな。
「か、奏さん……っ!」
勇気を振り絞って「おめでとう」と言おうとした、その時だった。
「――こっち」
「えっ⁉」
奏さんは私の腕を引き、そして路地裏の奥へと更に進んだ。
すると、奏さんと一緒にいたであろう男の人の声が聞こえる。
「あれ? 総長~どこ行ったんです?」
“総長”って……奏さんの事だよね? やっぱり奏さん、暴走族の人だったんだ。
そりゃそうか、最強ランキングに載ってるくらいだもんね。
あとで暴走族の名前を聞いてみよう。あ、でも……それも迷惑かな?
なんて思っていた時だった。