静穏総長も、時には激しく愛したい

トンッと、私の背中が壁に当たる。

そして目の前に、奏さんの姿があって……。



あれ?
これは一体、どういう状況?



「か、奏さん……?」

「……何か、あったの?」

「え?」

「涙、出てる」

「!」



少し眉をしかめて、口は固くギュッと閉じて。そして真剣な目で、私を見つめる奏さん。

その顔に「心配」って書いてあるみたいで……。私のちょっとした異変に気付く優しさに、胸がキュッとなる。



「こ、これは……」



さっきお父さんから電話を切られた時、悲しくてギュッと目をつぶったから……涙が出ちゃったんだ。

あれ? でも……



「涙が流れてないのに、よく”泣いた”って分かりましたね?」

「……むかつく」



すると奏さんは、パクッと。

私が持っていたクレープを食べた。
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