静穏総長も、時には激しく愛したい
「あっそ。じゃあ、ずっと見てれば?」
「え……」
「見られるもんなら、な!」
「な」と言った瞬間。男の人は赤髪の不良に近づき、そして逞しい腕を伸ばした。
いや、伸ばした……というより。不良の体を貫かんとする勢いで、パンチを繰り出していて……。
あんなパンチに当たったら、私は一発で死ねる自信がある――
なんて思っていると、パンチがヒットした不良の人も、食らった瞬間に気を失って地面に倒れた。
ドサッ
「ひぃ!」
「……だから言ったのに」
目を瞑れと言われて瞑らなかった素直じゃない私を、白い目で見る男の人。
そんな男の人の背後に、私は――ネズミのように、素早く移動した。
「ちょ、なに……」
「安全な場所に移動しただけです、お気になさらず……!」