静穏総長も、時には激しく愛したい
キスの意味





「……ふぅ。よし、いきますか」



ガチャ



家に着き、深呼吸。

そうして、ドアを開ける私。

そんな私の目に入ったのは――



「おかえりまさいませ、澪音お嬢様」

「澄(すみ)……ただいま」

「帰って早速ですが、旦那様がお待ちです」

「……ん」



燕尾服を着て、私に深々と頭を下げる執事・澄。

華奢な体つきだけど、顔が整っていて……その端正な顔が、いつも私に有無を言わさないオーラを発している。

今も、しかり。



「澪音お嬢様。今、”ゼッタイ行ってやるものか”って思いましたね?」

「そ、そんな事おもってないし」

「なら良いのですが。カバンはお持ちしますので、旦那様のお部屋へお急ぎください」

「……はぁ~い」



しっかり勘付いている、うちの優秀な執事。

「はい」という返事の中に、盛大にため息を込めた私は、澄に監視されながらお父さんの部屋へと向かう。
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