静穏総長も、時には激しく愛したい
澄は何も言わず、私にハンカチを渡す。それは、さっき澄が「落ちてましたよ」と言った白いリボン。
「これ……本当に私のリボン?」
「まさか。帰ってこられた時、お嬢様のリボンがない事に気付きまして。
絶対に旦那様に何か言われると思ったので、慌てて私のハンカチでカモフラージュさせていただきました」
「そうなんだ。さすが……出来る執事だね」
「お褒めに預かり光栄です」
「そこは謙遜してよ……」
苦笑で返すと、「着きましたよ」と澄。
長い廊下を渡り着いたのは、どこぞの旅館のようなお風呂の入口。
「お着換えを用意しておきます。“コレ”はひとまず、お嬢様のお部屋に」
「ん……カバンと一緒に置いといて」
コレ――と言った時、澄の手から一枚のお見合い写真が落ちる。