静穏総長も、時には激しく愛したい


――私がお前に似合うふさわしい男を選ぶ



どうやら私、奏さんと恋愛できないみたい。

奏さんを、諦めなければいけないみたい。

それがとっても悲しくて、辛いの――



「う~っ……ごぼごぼ」



泣き声が漏れると澄が心配するだろうから、バスタブの中に泣き声を隠す。


ご飯をパスしてお風呂に来てよかった。だって、こんな状態じゃ……絶対、ご飯食べながら泣いちゃうもん。

一人きりで、良かった。



「ぐす。のぼせちゃダメだし、もう出よう……」



最後に、お風呂の中にある全身鏡の前で自分を見つめる。

どこからどう見ても、ちっぽけな私。

そんな私がお父さんに逆らう事なんて……出来るはずがない。



「……っ、――あれ?」



悲しくて、再び泣きそうになった時。

右肩に目が行く。

少しだけ赤い……虫にでも刺された?
< 71 / 315 >

この作品をシェア

pagetop