静穏総長も、時には激しく愛したい
――私がお前に似合うふさわしい男を選ぶ
どうやら私、奏さんと恋愛できないみたい。
奏さんを、諦めなければいけないみたい。
それがとっても悲しくて、辛いの――
「う~っ……ごぼごぼ」
泣き声が漏れると澄が心配するだろうから、バスタブの中に泣き声を隠す。
ご飯をパスしてお風呂に来てよかった。だって、こんな状態じゃ……絶対、ご飯食べながら泣いちゃうもん。
一人きりで、良かった。
「ぐす。のぼせちゃダメだし、もう出よう……」
最後に、お風呂の中にある全身鏡の前で自分を見つめる。
どこからどう見ても、ちっぽけな私。
そんな私がお父さんに逆らう事なんて……出来るはずがない。
「……っ、――あれ?」
悲しくて、再び泣きそうになった時。
右肩に目が行く。
少しだけ赤い……虫にでも刺された?