静穏総長も、時には激しく愛したい


……あれ? 誰もいない。



「今の、まさか幽霊……!?」

「なわけないって」

「わぁ、また聞こえる!」



怖くなって、耳を塞ぐ。すると腕をぎゅっと掴まれ、引っぱられた。

「わ!」と驚いた時には、私はもう空き教室に入っていて。

全てのカーテンがしてあるからか、まだ朝だというのに、ほんのり薄暗い。



「え、どういう……」

「ビックリした?」

「!」



そう言えば、腕を掴まれたんだ――声がした方に目をやる。

すると、



「奏、さん……?」

「うん」

「!?」



昨日「痕が消える頃に会おう」なんて言った奏さんと、「もう奏さんとは会えない」と言った私が……


早くも、会ってしまった。

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