静穏総長も、時には激しく愛したい

だけど――「澄」。


この名前を聞いて、一気に現実に引き戻された。



――帰ったら澄に頼んで、一緒に写真を見よう



私は今日から、お見合い相手の候補を選ぶ。

奏さんではない誰かと、結婚するために。



「そう、だった……」

「澪音?」

「……っ」



私、やっぱりココにいちゃいけない。

奏さんをいくら好きになったって、報われないんだから。

それなら、傷は浅いうちに。この恋を、早く「なかった事」にしなきゃ――



「し、失礼しました……!」

「は、おい!」



ガラッ、バタン!


ドアを思い切り閉め、急いで逃げる。

保健室まであと少し。


それまで堪えるんだ、涙!



「うぅ~……っ、やっぱり辛すぎるよぅ」



自分から好きになった人を、まさか自分から諦めないといけないなんて。

覚悟はしてたけど、まさか、こんなに苦しいとは……。
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