静穏総長も、時には激しく愛したい
だけど「早く澄を連れて帰らないと!」と焦っていたから、聞き返すことが出来ない。
結局。
澄を引きずりながら、逃げるようにその場を後にした。
「もう澄! あんな言い方、失礼でしょ?」
「……私は悪くありません。まるで”つまみ食い”するような態度が、気に食わなかっただけです」
「つまみ食いって……。はっ!
私が飴を食べようとしてたって、どうして分かったの!?」
「……」
すると澄は顔を歪めて「むしろ食べようとしてたんですか?」と、ドン引きした目で私を見た。
え?
「つまみ食い」って、私のことじゃないの?
「澄は、いったい誰のことを言ってるの?」
「……はぁ。とりあえず、お嬢様。帰ったら写真を見ますよ」
「え? う、うん」
「見たら分かりますよ。“つまみ食い”の意味も。さっきの人が誰かということも」
「?」
それって――と思っていると、澄が「はぁ」と、深いため息をつく。
「嫌なもんですね。お見合いって」
「澄……」
私と同じくらい……むしろ、私よりも落ち込んだ声で、澄がポツリと呟いた。