静穏総長も、時には激しく愛したい

どうしたんだろう。

こんな静かな雰囲気の澄も、珍しい。



「その飴……あげるよ?」

「え?」

「澄が元気ないのは、なんか調子狂うし」

「お嬢様……」



すると澄は、手の中のハートの飴を、ギュッと握る。

そして、



「この飴のように、あなたの心を手の中に閉じ込めておきたい……なんて。ちょっとキザですかね」



私に聞こえないように、ひとり言をポツリ。

当然、お見合い写真の事で頭がいっぱいになっていた私は、澄の声に気付けなくて……。



「ん? 何か言った?」

「……いえ、何でもありません」



結局、はぐらかされたまま。

二人で仲良く、家を目指す。



「(そういえば、手が繋がったままだ)」



この感覚に「懐かしいなぁ」と。

小さな私に、小さな頃から仕えてくれた澄を思い出す。
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