静穏総長も、時には激しく愛したい
「昨日、お嬢様がお風呂にいかれる前に、一枚だけお見合い写真が落ちたでしょう? あの時、わたしは写真を見たのです。
まさか今日、道端で偶然に出会うとは思いませんでしたが……」
「そっか、澄は気づいてたんだね。でも”つまみ食い”だなんて……あの言い方はヒドイよ?」
「まだお見合いが決定しているわけでもないのに、お嬢様に慣れ慣れしかったので……それが不愉快だっただけです」
ツーンとそっぽを向く澄。自分が悪い事をしたとは、全く思ってないみたい。
そんな澄を横目に見ながら、次々にお見合い写真へ目を通す。
そして、ザッと二十枚。全てを見終えた。
「澄、私……決めたよ」
「……お見合いするお相手を、ですか?」
「うん」
最初に見たため、全て見終わった今では、一番下に下敷きになっているお見合い写真を手に取る。
「今日会った人。純白純弥さんと、お見合いする」
「え……」
グッと、何かを言いたそうな澄だけど。
そんな澄の口に、手を伸ばす。そして「何も言わないように」と。手のひらを広げ、首を横へ振った。