静穏総長も、時には激しく愛したい
「お嬢様、ご立派でした。強くなられましたね」
「!」
それだけ言って、去って行く靴音。
そっか……。澄は私に気を遣って、部屋の中に入らなかったんだね。
私に泣く時間を。悲しむ時間を……与えてくれるんだ。
「ありがとう、澄……っ」
ポロッと、頬を流れる涙。それは次から次に落ちてきて、またたく間に服が濡れてしまった。
「グスッ……いけない。せっかく澄が”強くなった”って言ってくれたのに」
泣くのは、今日で最後にしなきゃ。そうじゃないと、純白純弥さんにも悪いもん……。
テイッシュで涙をぬぐい、顔をパンパンと叩く。
そして来たるお見合いの日に向け、覚悟を固めていくのだった。