メガネむすめ

中旬

九月十一日

 今日は、何と言えば良いのだろうか。いわゆる普通の一日だった気がする。早瀬君の描く絵のモデルになり、早瀬君が描いている最中に他愛も無い話をしたり、美術部員の人に私と早瀬君が恋人ということがバレたり。
 普通の一日だったが、私は一つ不安に思うことが出てきた。それは、この普通が壊れた時、即ち早瀬君が引っ越してしまった時。私はどうなってしまうのが、一切予想が出来ないということだ。前日の日記に忙しさとは人の感性を鈍らせる麻薬のような要素を持っているのではないかと記述した。では、私にとって早瀬君はどれくらい大きな存在なのだろう。
 定説では人間、いや生物というのは失うことを潜在的に嫌っているらしい。そして私は以前には無かったものを持っている、それは早瀬君を好いているという感情、そして、早瀬君が遠くに行ってしまった場合。早瀬君がいなくなってしまった場合は、火を見るより明らかだろう。
 分かっていた。覚悟はしていたつもりなのに、胸を抉る感情が沸き起こってきた。今日はもう眠ることにする。
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