メガネむすめ
九月二十六日
早瀬君の希望により今日は午前中に動物園へ行くことになったのだが、私がつい動物園前の鳩に夢中になってしまい、餌代に五百円を浪費するまで堪能していたので気付いた頃には正午になりかけていた。何とも無駄な時間を過ごさせてしまったことを謝罪すると、「楽しそうだったから良いよ、俺も見てて楽しかったし」と笑顔で許してくれた。
動物園の中に入ると、予想はしていたが、予想以上の数の動物がいた。そしてライオンに初めて触った。硬くない、フワフワだった。凄く温かくて可愛かったけど、ここにいる動物は恐らく動物としての本能を大半失っているのだろと思うと、少し申し訳ないようにも思えてきた。そんな折「楽しくなかった?」と、早瀬君に言われてしまった。私はそれを否定して、人間の勝手で動物の行動を制限していることは人間の高慢なのではないだろうかと告げた。すると早瀬君は野生で生きることの辛さと、百獣の王のライオンでも大人になるまで成長するのは珍しいことなどを教えてくれた。そして最後に「『辛くない』って思えば、案外辛くないかもしれないかもね」とも言っていた。私はそれに対し、檻の中で生活をするのが辛くない動物が想像出来ないと言うと「けど、俺たちも」そこまで言って、早瀬君は言葉を切った。
その会話をする頃には動物園を一頻り見て回っていたので、私たちは動物園を出て鳩に餌をあげた後、いつも通りの道を歩いて、最後は川辺で夕日を眺めた。
その夕日を眺めている間、動物園での最後の会話を思い出していた。檻の中のライオン。……確かに、もうすぐ私たちもそうなるのかもしれない。
早瀬君の希望により今日は午前中に動物園へ行くことになったのだが、私がつい動物園前の鳩に夢中になってしまい、餌代に五百円を浪費するまで堪能していたので気付いた頃には正午になりかけていた。何とも無駄な時間を過ごさせてしまったことを謝罪すると、「楽しそうだったから良いよ、俺も見てて楽しかったし」と笑顔で許してくれた。
動物園の中に入ると、予想はしていたが、予想以上の数の動物がいた。そしてライオンに初めて触った。硬くない、フワフワだった。凄く温かくて可愛かったけど、ここにいる動物は恐らく動物としての本能を大半失っているのだろと思うと、少し申し訳ないようにも思えてきた。そんな折「楽しくなかった?」と、早瀬君に言われてしまった。私はそれを否定して、人間の勝手で動物の行動を制限していることは人間の高慢なのではないだろうかと告げた。すると早瀬君は野生で生きることの辛さと、百獣の王のライオンでも大人になるまで成長するのは珍しいことなどを教えてくれた。そして最後に「『辛くない』って思えば、案外辛くないかもしれないかもね」とも言っていた。私はそれに対し、檻の中で生活をするのが辛くない動物が想像出来ないと言うと「けど、俺たちも」そこまで言って、早瀬君は言葉を切った。
その会話をする頃には動物園を一頻り見て回っていたので、私たちは動物園を出て鳩に餌をあげた後、いつも通りの道を歩いて、最後は川辺で夕日を眺めた。
その夕日を眺めている間、動物園での最後の会話を思い出していた。檻の中のライオン。……確かに、もうすぐ私たちもそうなるのかもしれない。