冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「気にしないでください。言ったじゃないですか、妻の役目を果たしたいと」

 左京が必要としてくれるなら応えたい。そう思った。

「母も出席するから紹介するよ」
「左京さんのお母さん?」

 結婚の事情が事情なので、左京の親族には会わないままになるかと思っていたのだが。

「ど、どんな服を着たらいいんでしょうか。緊張します」
「ありのままの蛍でいい」

(ほ、本当に?)

 その日から左京の寝室で一緒に眠るようになった。

 というより、翌日の夜に当然のように自室に向かおうとした蛍を彼が引き止めたのだ。

「まさか、ゆうべの一夜かぎりのつもりだったのか?」

 どう返事をしていいのかわからず固まる蛍に、左京はからかうような笑みを浮かべる。

「冷たいな、蛍は」
「そ、そんなことは!」
「なら」

 左京は蛍の肩を抱き、自分の部屋の前まで連れていく。扉を開け、艶めいた声でささやいた。

「これから蛍の眠る場所は俺の隣だ。覚えておけ」

 心臓が破裂しそうに高鳴って頬が熱くなる。パタンと扉が閉まると同時に左京の熱い唇が首筋に押しつけられる。

「んっ」
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