冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 洋服のことだろう。彼の言うとおり、ゆうべは遅くまでクローゼットの前でうなっていた。

 結局、オーソドックスなネイビーのワンピースを選んだ。白い襟がついているので、ドレッシーになりすぎず昼の会食にはちょうどいいかと思ったのだ。靴はT字ストラップのパンプス、ベージュのバッグと色を合わせている。

「子どもっぽくないでしょうか。というより、左京さんのお母さまの好みに合っているでしょうか」

 服選びに悩んだ理由の九割はそれだ。

(偽装結婚だけど義母は義母よね。できれば嫌われたくない)

 会社での評判などをかんがみても、自分は決して女性に好かれる性格ではない。だから余計に不安だった。

「息子の言葉はあまり信用ならないかもしれないが、母はのんびりした人だからそう気負うことはないよ。それより……」

 左京は深刻そうに眉根を寄せた。

「親族が君に失礼なことを言ったり、偉そうな態度をとったり、とにかく不愉快な思いをさせるかもしれない」

 先日のバレエ鑑賞のときに会った左京の親族を思い出す。

(たしかに、あまり感じのいい人ではなかったな)
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