冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 前に美理と会ったとき、ちょうどマンションの契約更新が迫っていて気分転換に引っ越すか迷っていると相談したのだ。でもその頃ちょうど先輩が産休に入り、新居探しをする余裕がなくなってしまった。

 蛍は小さくため息をつく。

「やっぱり無理してでも引っ越しすればよかった」
「今のマンション、騒音が気になるって前から言ってたもんね」

 蛍のマンションは文京区にある単身向け1DK。立地はいいが、幹線道路が近いせいでやや騒がしい。けれど、問題はそこではない。

「そうじゃなくて。実はね……ちょっと気になることがあって」

 このところ郵便物の紛失という不可解なことが起きているのだと、蛍は美理に打ち明けた。

「え~、なにそれ。怖いね」

 美理はおびえた顔で自身の二の腕をさする。

「うん。届いているはずの手紙が届かなかったり、通販で買いものした商品がすごく遅れたり。大きな被害ってわけではないんだけど」

 気がついたのはひと月くらい前で、もうマンションの更新手続きはとっくに終えていた。

「それ、ストーカー的なやつじゃないの? 前にテレビでそんな話をやっていたよ」

 美理は本気で心配そうにしている。
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