冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 たくさんお喋りをしてから、喫茶店を出た。夫と合流するという美理に別れを告げて、蛍はぼんやりと四条通を歩いた。一泊二日の旅で、今夜の新幹線でもう東京に戻る予定だった。

(あと三時間くらいか。ブラブラしてたらすぐかな)

 忘れないうちに会社に土産を買おうと、名の知れた和菓子屋に入る。定番の味と季節限定の味のふた箱を買って、また四条通に出る。そのとき、ふと強い違和感を覚えて蛍は顔をあげた。

 ゆっくりと視線を動かしてみる。そう人手は多くないが、なんといってもここは全国でも有数に観光客の多い京都だ。外国人の団体、中年夫婦、家族連れ。それなりに人が歩いている。みんな違和感なく街になじんでいるが、ひとりだけ異質な存在が交じっていた。

 スーツ姿のビジネスマン。百八十センチ以上あるだろうか。背が高く、肩や腕もたくましくアスリートのような身体つき。
 顔立ちはとても整っていた。鼻筋や顎のラインはすっきりとしていて、切れ長の目も薄い唇も知的で涼しげな印象を与える。少し長めの前髪がはらりと額にかかっているのが、なんとも色っぽい。
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