冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
政平は家庭をかえりみない男だった。結果、妻は不倫に走り、いつしかそれが本気になって間男のほうと添い遂げると決意したようだ。
不貞を働いていたのは妻のほうなのに、菅井一族の間でも聞こえてくるのは『仕方ないね』の声ばかりで誰も政平に同情はしていない。
かつての部下のなかで、今も彼の話に耳を傾けてくれる者がどれだけいるだろうか。警視総監でなくなった彼に、なにが残っただろう。
そんなことを思うと、政平の威厳がだんだんと虚勢に見えてくる。
彼は「ははっ」と乾いた笑い声をあげた。
「出世より温かい家庭。なんだ、そんな腑抜けたことをお前も言いたいわけか」
「いいえ。俺はどっちも手に入れます」
彼は片方しか手に入れられなかった。自分はどちらもつかみ取る。
「落ちこぼれ、でないことはきっちり仕事で証明してみせるので、これまで以上に期待しておいてください」
蛍との結婚、最初に話を聞いたときはただただ面倒に感じただけだった。だが、警察組織の一員として自分が適任だと判断したから受け入れた。もちろんデメリットばかりではないという打算もしっかり働いていたが。
不貞を働いていたのは妻のほうなのに、菅井一族の間でも聞こえてくるのは『仕方ないね』の声ばかりで誰も政平に同情はしていない。
かつての部下のなかで、今も彼の話に耳を傾けてくれる者がどれだけいるだろうか。警視総監でなくなった彼に、なにが残っただろう。
そんなことを思うと、政平の威厳がだんだんと虚勢に見えてくる。
彼は「ははっ」と乾いた笑い声をあげた。
「出世より温かい家庭。なんだ、そんな腑抜けたことをお前も言いたいわけか」
「いいえ。俺はどっちも手に入れます」
彼は片方しか手に入れられなかった。自分はどちらもつかみ取る。
「落ちこぼれ、でないことはきっちり仕事で証明してみせるので、これまで以上に期待しておいてください」
蛍との結婚、最初に話を聞いたときはただただ面倒に感じただけだった。だが、警察組織の一員として自分が適任だと判断したから受け入れた。もちろんデメリットばかりではないという打算もしっかり働いていたが。