冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
◇ ◇ ◇

 左京が島から似顔絵を見せてもらったのと同じ日。時間は少し巻き戻り、正午。

 午前の仕事が終わると、みなが一斉にフロアを飛び出していく。経理部は外出機会が少ないせいかランチは外派の人間が多い。蛍はデスクでお弁当が楽で好きだけれど、今日はランチバッグを持ってフロアを出る。天気もいいのでオフィス横の公園で食べようと考えたのだ。

(ササッと食べて如月さんに電話してみよう)

 ゆうべの芙由美からの提案、海外に逃げる件。

 彼女は考える時間を与えてくれたが、きっと返事は急いだほうがいいだろう。芙由美の性格なら、蛍の答えを聞く前から準備を始めていそうな気もする。蛍の出した答えはその労力を無駄にするものだから。
< 172 / 219 >

この作品をシェア

pagetop