冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 蛍は首にかけていた細いプラチナのチェーンをつまむ。左京から贈られた結婚指輪、ダイヤが豪華すぎてオフィスでは目立ってしまうのでネックレスにして服の内側にしまっていたのだ。

 菅井本家で左京の本心を聞いてしまったあとは外そうか悩んだけれど、結局外せずに毎日身につけている。
 日の光にキラキラと輝くそれをキュッと握って、そっと口づけた。

「左京さん」

 小さく名前を呼ぶだけで胸が切なく疼いた。厳しい顔も甘いほほ笑みも、これまで見てきた彼のさまざまな表情を思い出す。
 
 たしかに自分は、赤霧会をつかまえるための便利なコマなんだろう。きっと左京にとっての最優先は蛍の安全ではない。でも、それでもいいと思えた。

(左京さんの出世を応援したい、役に立ちたいとずっと思ってた。この状況はいわば本望よ! それに……)

『必ず守る』

 彼は何度もそう言ってくれた。あの言葉だけは絶対に嘘じゃないと、蛍は今も信じている。

(左京さんなら赤霧会をつかまえて、そのうえで私のことも助けてくれるはず。だから海外に逃げる必要なんかない。彼のそばが一番安全だ)
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