冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 運転手はボディガードもかねているので、身体が大きく強そうな男性だ。

 無口で愛想はないが、職務には忠実で蛍がオートロックの扉の内側に入るまで必ず見届けてくれる。今夜も同じだった。

 彼の車が動き出すのを確認してから蛍もエレベーターに向かう。

(帰宅は何時頃になるか、左京さんに聞いてみてもいいかな)

 メッセージを送ろうとバッグからスマホを取り出したとき、ちょうど着信を知らせる音楽が流れ出した。左京かと期待したが、画面に表示されたのは晋也の名だった。

(如月さん? もしかしてもう芙由美さんに話してくれたのかしら)

 芙由美が納得してくれたかどうか気になり、蛍は急いで応答する。

「はい、蛍です」
「蛍さん! 大変なんです。菅井さんが……」

 緊迫した晋也の声が蛍の不安を一気に煽った。

「左京さんになにかあったんですか?」
「と、とにかく一緒に来てください。今、蛍さんのマンションに向かっているので落ち合いましょう」

 心臓がドクドクと激しく打ちつける。うるさくて、ちっとも思考がまとまらない。動揺と焦りでもつれる足をどうにか動かして蛍は外へと走った。
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