冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「犬伏さん、怒っていますよ。蛍さんが素直に海外に行ってくれていれば向こうから安全に海堂先生を脅すことができたのにって。最近の日本は暴力団への締めつけが厳しくて、国内で事を起こすのは赤霧会にとっても命懸けなんだそうです」

 つまり晋也は海外で蛍の安全を保障する気なんてなかった。警察の監視が緩むどこかの国で、蛍を赤霧会に渡すつもりだったのだろう。

 晋也は深いため息をついた。

「蛍さんが日本に残るなんて言うから……舞台を変更するはめになったんです。私もさっきのように、慣れない手荒なマネをしなくていけなくなりました」

 舞台が海外から日本の倉庫街に変わっただけで、自分は今から赤霧会に監禁されることになるのだろう。

 状況を理解した蛍の身体がガタガタと震え出した。恐怖で頭がどうにかなりそうだ。ペラペラとすべて喋ってしまう晋也が憎らしいと思うほどに。

(あぁでも、左京さんになにかあったわけじゃなかったんだ。それだけはよかった……)

 この最低最悪の状況で唯一の救いだった。

 だんだんと交通量が減り静かになっていく。目的地に近づいているのかもしれない。

「海堂先生は身代金を払ってくださるでしょうか」
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