冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
男たちはボソボソとそんなことを話している。会長というのが左京たちの言っていた犬伏のことだろうか。
どのくらい経ったのだろう。
扉の開く音とともに新鮮な空気が流れてくる。視線をそちらに向けると、月明かりに照らされた男のシルエットが浮かぶ。
(この人が……犬伏?)
想像より身長は高くない。左京のほうが五センチ以上は高そうだ。この場にいる赤霧会の三人と比べても、特別に体格がいいわけでもない。
けれど……まとう空気だけで恐ろしかった。彼の登場で場の温度が一気にさがったような気がした。
「会長。この女です」
「あぁ、お疲れさん」
犬伏はコツコツと靴音を響かせながらこちらに近づいてくる。蛍の前にかがみ「ふぅん」とどこか楽しげな声を発した。
蛍はこわごわ顔をあげ正面から男の顔を見る。思っていたよりずっと若かった。まだ四十歳にはなっていないだろう。銀に近いような金髪、黒いシャツの襟元から刺青のようなものがチラリと見えた。
彼は胸ポケットから煙草を取り出すと、銀色のライターで火をつける。おいしそうに深く吸い込み、蛍に遠慮することなく吐き出した。
どのくらい経ったのだろう。
扉の開く音とともに新鮮な空気が流れてくる。視線をそちらに向けると、月明かりに照らされた男のシルエットが浮かぶ。
(この人が……犬伏?)
想像より身長は高くない。左京のほうが五センチ以上は高そうだ。この場にいる赤霧会の三人と比べても、特別に体格がいいわけでもない。
けれど……まとう空気だけで恐ろしかった。彼の登場で場の温度が一気にさがったような気がした。
「会長。この女です」
「あぁ、お疲れさん」
犬伏はコツコツと靴音を響かせながらこちらに近づいてくる。蛍の前にかがみ「ふぅん」とどこか楽しげな声を発した。
蛍はこわごわ顔をあげ正面から男の顔を見る。思っていたよりずっと若かった。まだ四十歳にはなっていないだろう。銀に近いような金髪、黒いシャツの襟元から刺青のようなものがチラリと見えた。
彼は胸ポケットから煙草を取り出すと、銀色のライターで火をつける。おいしそうに深く吸い込み、蛍に遠慮することなく吐き出した。