冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 煙草を持つのとは反対の手手が伸びてきて、蛍の顎をガッとつかんだ。

「あんたが海堂治郎の隠し子か」

 恐怖で唇がワナワナと震える。

 犬伏の目が……怖くてたまらなかった。血走った凶悪な瞳。飢えた獣のようだ。

 縛られた蛍の口はハクハクと動くだけで声にはならなかった。

「マル暴にいた菅井ってやつの女らしいな。一度会ったことがあるが……いけ好かない男だったなぁ」

 彼の視線が蛍の胸元に落ちる。彼はクッと笑うと煙草を床に投げ捨て、靴でグシャリと踏みつぶした。

 犬伏の目がニヤッと不気味に細められる。不吉な予感に心が黒く塗りつぶされる。

「あんたをメチャクチャにしてやったら、あのすかした男がどんな顔をするか……興味があるな」

 彼の手がスカートの上から蛍の太ももを撫でた。恐怖と嫌悪で蛍はえずいた。

「うっ、ふぅ……」

 ようやくかすかに声が出た。

「ははっ、いいねぇ。俺は泣きわめいて嫌がる女が相手じゃないと昂らない性質なんだ。あんたは楽しませてくれそうだ」

 舌舐めずりをした狂犬がその瞳の真ん中に蛍をとらえた。

 










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