冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 考えるだけで気が狂ってどうにかなりそうだ。

 左京はもう一度、蛍に電話をするがやはり応答はない。嫌な予感がヒタヒタと左京を浸食していく。

【如月晋也を信用するな】

 左京の勘が正しければ、おそらく蛍はこれを読める状況にはない。だが勘が外れていることを祈ってメッセージだけは送っておいた。

「危険って具体的には?」

 島に問いかけられ左京は考え込む。

 犬伏は即物的な男だ。だからこそシノギをつぶされそうな現状に怒り、暴れようとしている。そこにどういう事情かは不明だが、如月晋也というコマを手に入れた。犬伏はなにをもくろむだろうか。

(たとえば蛍を人質にして、自分たちの要求をのむよう海堂家に求める)

 治郎がおとなしく従えばそれはそれでよし。彼が警察を通し正攻法で抵抗してきた場合、赤霧会は当然罪に問われる。だが、彼らは逮捕などそう恐れてはいない。箔がつくからと下っ端を言いくるめれば済む話だからだ。

(厄介なことに、この場合も赤霧会には得るものがある)
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