冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
(この命に代えても蛍だけは守り抜く)

「島。すぐに警視庁に戻り人員を集めてくれ。犬伏を探し出し、取っつかまえろ」
「――承知」

 左京はもう警視庁を離れた身で彼の上司ではない。なにかを命じたければ上を通さなければならないのだが、左京の覚悟を彼は察してくれたようだ。くるりと踵を返し走り出した。

 こんなふうに騒ぎ立ててなにもなければ責任問題だ。左京の出世街道はここで閉ざされる。

(そうなればいいと思う自分なんて、蛍に出会うまでは想像もできなかったな)

 左京は今、心の底から自分の勘が大外れであることを願っていた。警視庁からも警察庁からも失笑され、菅井家から落ちこぼれの烙印を押されても構わない。

(蛍……無事でいてくれ)
 

< 187 / 219 >

この作品をシェア

pagetop