冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 男たちがわずかに扉を開けると、細い月明かりが差し込む。

 その瞬間、ダンッという恐ろしい音が響いた。と同時に「蛍っ」と自分を呼ぶ声が届いた。

 身体が温かいもの包まれて、犬伏の銃口から蛍を守ってくれる。

 そのあとの展開はあまりにも目まぐるしかった。

 後ろから不意打ちされた銃弾に倒れたのは犬伏だったようで、肩の辺りから流れる鮮血が床に広がっていく。その彼を目がけて数名の男たちが飛びかかる。

(倉庫の奥に人がいたの?)

 蛍はやっと状況を理解する。事情はさっぱりわからないが、警察は蛍たちがここに到着するより前から倉庫内に潜んでいたようだ。

 開いた扉からも警察官がなだれ込んできて、数の勝利であっという間に赤霧会の人間を制圧した。

「蛍、無事か?」

 かけられた声でようやく我に返る。弾かれたように顔をあげれば心配そうに眉根を寄せる左京がそこにいた。

「……左京さん」

 犬伏が撃たれる瞬間に蛍を守るために飛び出してきた人物は左京だったのだ。

「怪我は? 危険な目にあわせて本当に……」

 青ざめた顔で苦悩する左京に蛍はふっとほほ笑んでみせた。
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