冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 弟、といっても蛍と彼は一度か二度しか顔を合わせたことがない。

 ひとつ年下で、最近務めていた大企業をやめ治郎の秘書になったばかりと晋也から聞いてはいた。治郎の後継として政治家を目指すのだろう。

「なるほど。弟が難しいので私、だったんですね」
「だが蛍は俺と結婚したこともあって一時ターゲットから外す方向で考えていたようだ。その時期はほかに狙えそうな人物を探していた」

 左京と結婚させるという海堂家の策は一応、功を奏していたらしい。

「なのにまた方針転換をした。その理由はきっと如月さんですね」
「そうだ」

 左京はうなずき、蛍の知りたかったことを教えてくれる。

「赤霧会は海堂家のあれこれを探っていた。その過程で如月晋也の秘密を知ったようなんだ」
「秘密?」
「如月はオンラインカジノにはまって借金をこしらえていた。もちろんオンラインだろうがなんだろうがカジノは違法だ」

 彼がそんな罪を犯す人間とは今でも信じられない気持ちだが、ギャンブルというのは軽い気持ちで始めてズブズブと堕ちていってしまうものなのかもしれない。

「カジノで借金……あっ」
「どうした?」
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