冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
 蛍が拒んだから計画を変更するしかなくなったとぼやいていたのだ。

「だろうな。もし蛍が自主的に海外、それも日本の警察との連携が難しい国に行っていた場合は赤霧会にかなり優位な展開になっていたと思う」
「そうなんですか?」
「あぁ。逆にいえば、国内で事を起こしたらやつらの負けだった。こちらは数年前から赤霧会のことは徹底マークしていたから」

 暴力団を完全壊滅させることを俗に〝頂上作戦〟と呼ぶらしい。赤霧会はその頂上作戦の対象だったと左京が説明してくれた。

「俺が犬伏なら、蛍が自主的に国外へ出てくれないとなったら作戦はそこでストップしただろうな」

 蛍が国外脱出を拒んだ時点で赤霧会に勝ち目ななかったようだ。左京は皮肉げに笑う。

「あいつは狂犬だからな、たとえ行き先が崖でも一度走り出したらもう止まれなかったんだろう」
「でも警察はいつの間にあそこまでの準備を?」

 犬伏を撃った警察官はコンテナの陰に隠れて、蛍たちより奥に潜んでいたのだ。

 つまり赤霧会の三人より先のあの場に到着していたということになる。赤霧会の動向に注意を払っていたにしても、超能力でもあるかのような動きだ。
< 195 / 219 >

この作品をシェア

pagetop