冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「手短に済ませるつもりだったのに長々と話し込んでしまってすまない。蛍はもう少しゆっくりと休んだほうがいい。君の会社にも事情を説明してあるから」
「はい」

 左京は腰を浮かせようとしたが、迷ったすえにもう一度座り直した。

「最後にもうひとつだけいいか?」

 蛍がうなずくと彼は言った。

「菅井本家から帰ってきたあと、蛍はどこか様子がおかしかっただろう。誰かになにか不愉快なことを言われたんじゃないかと気になっていて……」
「あ、それはその」

 蛍は正直に打ち明けた。菅井一族の現当主である政平と左京の話を立ち聞きしてしまったこと。聞き終えた左京が愕然とした顔でがっくりと肩を落とした。

「そういうことか。誰が蛍を傷つけたのかとヤキモキしていたが……俺だったのか」

 左京は謝罪をしたうえで、あの話には続きがあったことを教えてくれた。

 少し照れながら語ってくれた〝続き〟が彼の本心であることが十分に伝わってくる。

「……そうだったんですね。ならもう少しだけ立ち聞きしていればよかったです」

 蛍はふふっと口元を緩めた。胸が温かくなり幸せを実感する。
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