冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「だが、そんな誤解があったのに蛍は海外へ逃げずに俺のそばにいることを選んでくれたんだな」
「左京さん、眠っている私に『愛してる』って言ってくれましたよね?」

 蛍がささやくと左京の頬がかすかに赤くなった。

「知っているということは寝たふりだったんだな」
「ごめんなさい。でもあの言葉があったから、左京さんを信じようって思えました」

 あの言葉がなかったら晋也の口車に乗せられて海外へ逃げるほうを選んでいたかもしれない。そうしたら今頃自分はどうなっていたことやら。

 ふわりと蛍の身体が温かいものに包まれた。左京が優しく抱き締めてくれたのだ。

「信じてくれてありがとう」
「左京さん」
「ん?」

 甘い声で彼が顔をのぞき込んでくる。

「私、よくがんばりましたよね?」
「あぁ」
「だからその、ご褒美が欲しいんです。もう一度だけ左京さんの『愛してる』が聞きたいな~なんて」

 図々しいのは承知のうえで頼んでみた。左京はははっと声をあげて笑う。

 そして蛍の耳に唇を寄せささやいた。

「もう一度だけじゃない。これからずっと毎朝、毎晩、何度でも言う。俺は蛍を愛してる」
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