冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
さまざまな事後報告と一緒に、左京がそう教えてくれた。
芙由美は日本のヤクザに厳しいアメリカに蛍の逃亡先を準備していた。彼女の『情け』は本物だった。けれど晋也は彼女には秘密で、蛍を別の国に送ることを計画していたようだ。
海堂家の関係者のなかでは唯一信頼できると思っていた晋也に裏切られたことは今でも思い出すと胸がチクリとするし、事件のショックもまだ尾を引いてはいる。
(でも左京さんがいてくれるから)
だんだんと傷も癒え、前を向くことができている。だからこそ、ここに来る決意もできた。
(でもきっと、これが最初で最後だ)
応接間の中央に置かれた重そうなテーブルを挟んで治郎と対峙する。
呼び出したくせに彼がなかなか口を開かないので、仕方なしに蛍は言った。
「今日、芙由美さんと要治さんは?」
弟である要治をさんづけするのは変かもしれないけれど、「要治くん」と呼べるほど親しくもない。小さい頃に数回会っただけなので、向こうは蛍の顔など覚えてもいないだろう。
「あ、あぁ。芙由美は買いものに出かけていて、要治は仕事だ」
「そうですか」
芙由美は日本のヤクザに厳しいアメリカに蛍の逃亡先を準備していた。彼女の『情け』は本物だった。けれど晋也は彼女には秘密で、蛍を別の国に送ることを計画していたようだ。
海堂家の関係者のなかでは唯一信頼できると思っていた晋也に裏切られたことは今でも思い出すと胸がチクリとするし、事件のショックもまだ尾を引いてはいる。
(でも左京さんがいてくれるから)
だんだんと傷も癒え、前を向くことができている。だからこそ、ここに来る決意もできた。
(でもきっと、これが最初で最後だ)
応接間の中央に置かれた重そうなテーブルを挟んで治郎と対峙する。
呼び出したくせに彼がなかなか口を開かないので、仕方なしに蛍は言った。
「今日、芙由美さんと要治さんは?」
弟である要治をさんづけするのは変かもしれないけれど、「要治くん」と呼べるほど親しくもない。小さい頃に数回会っただけなので、向こうは蛍の顔など覚えてもいないだろう。
「あ、あぁ。芙由美は買いものに出かけていて、要治は仕事だ」
「そうですか」