冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「実は俺もな、その指輪を買うときチラッと頭をよぎりはしたんだ。だが『出世のための結婚』なんてしょうもない発言をしてしまった手前……自分のぶんは買えなかった」

(悩んでいたのは私だけじゃなくて、左京さんも同じだったんだな)

 最初はただの契約結婚だったけれど、一緒にいるうちにちゃんと双方に愛が芽生えていた。その事実がただただ嬉しい。

「じゃあ今日こそ、左京さんに似合う指輪を見つけましょうね」
「あぁ」

 彼の車で銀座に向かう。蛍の指輪と同じブランド、ほかにもいくつかのショップを見て回る。

「う~ん。左京さんの指、長くて綺麗だからどれでも似合ってしまって逆に難しいですね」

 シンプルなプラチナリング、デザイン性の高いもの、目移りしてしまってなかなか決まらない。優柔不断な蛍にあきれてしまったのだろうか、左京の姿が見えない。

「あれ、左京さん?」

 見れば少し離れたところで店員にクレジットカードを渡している。

(まさか指輪を自分で買ってしまった?)

 これは蛍からのプレゼントにしたかったから、慌てて確認しに行く。すると左京はけろりと答えた。
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