冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「あいつらは君が和菓子屋に入る前から君のすぐ近くにいた。君が店に入った途端に不自然に歩調を緩めてその場にとどまった。さらに男の目は恋人らしき女には一度も向かわず、ずっと君を追っていた」
彼の話が自分にとってどういう意味を持つのか、すぐには理解できなくて蛍の頭は混乱した。
「最初は君が美人だからかとも思ったが、あの目はそういうのじゃない。あいつは君を監視してた」
「あのカップルが私を見ていた? どうして?」
沈黙が流れる。問いかけはぽっかりと宙に浮き、彼も蛍自身も答えを出せない。
「本当に思い当たる節はないんだな?」
「当たり前です。私は東京からの旅行客で、彼らのことなんか知りません。そもそも、怖い人と関わり合いになるようなこともしていませんし……きっと人違いです」
(うん、そうよ。ただの人違い。今頃はあのカップルもその事実に気がついて『あ~あ』と思っているかも)
納得できる答えが出て、幾分か恐怖もやわらぐ。だが、彼は歯切れが悪い。ズボンのポケットに手をつっこみ、軽く肩をすくめた。
「ならいいが……東京から来たと言ったな。ひとりか? いつ帰る?」
彼の話が自分にとってどういう意味を持つのか、すぐには理解できなくて蛍の頭は混乱した。
「最初は君が美人だからかとも思ったが、あの目はそういうのじゃない。あいつは君を監視してた」
「あのカップルが私を見ていた? どうして?」
沈黙が流れる。問いかけはぽっかりと宙に浮き、彼も蛍自身も答えを出せない。
「本当に思い当たる節はないんだな?」
「当たり前です。私は東京からの旅行客で、彼らのことなんか知りません。そもそも、怖い人と関わり合いになるようなこともしていませんし……きっと人違いです」
(うん、そうよ。ただの人違い。今頃はあのカップルもその事実に気がついて『あ~あ』と思っているかも)
納得できる答えが出て、幾分か恐怖もやわらぐ。だが、彼は歯切れが悪い。ズボンのポケットに手をつっこみ、軽く肩をすくめた。
「ならいいが……東京から来たと言ったな。ひとりか? いつ帰る?」